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vol.10 No.1 ver.2 発行:成瀬医院 成瀬 清子 東京都杉並区清水 2-22-22 tel 03-5311-5133 |
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目 次
大寒に入り新年のご挨拶をするには遅い季節になってしまいました。皆様にはご心配をおかけいたしましたが、私は手術をしたことを全く意識しないほど元気に過ごしています。それでも、今年はあまり無理をせず、ほどほどに頑張って過ごそうと思っています。というわけで、そよかぜ通信もなかなか発行にいたりませんが、今年もどうぞよろしくお願いいたします。
今回のそよかぜ通信は、いつもにも増して冗長な内容です。コンパクトな情報はいろいろなところにあります。この通信は、私の主観がふんだんに入っていることをご了承のうえ、興味のある方、お時間のある方だけお読み下さいね。
今シーズンのインフルエンザの流行はこの10年で一番早く、そのなかでも杉並区は先頭を切りました。しかし、お正月休みの小休止のあと、全国的には年末以上の流行になっていますが、杉並を含めて東京では患者数はそれほど急増していません。ただ、2003〜2005年の1月の患者数グラフにきっちり重なっています。これから2月の受験シーズンにむかって、インフルエンザもピークを迎えると思われます。以前のそよかぜ通信を参考に、睡眠をとる、部屋の温度、湿度を保つ、人ごみに出るときはマスクを使うなど、充分ご注意下さい。
なお、インフルエンザの治療薬であるタミフルやリレンザは、多くの方は使わなくてもよい薬である一方、高齢者などではウィルスの増殖を押さえ重症化防止を期待できる優れた薬でもあります。インフルエンザに伴う異常行動の多くはタミフルによらないことがわかってきました。しかし、耐性ウィルスを作らないためにも乱用は避けなければなりません。使用するかしないかは、そのときの状況によります。お一人お一人ごとに考えていきましょう。
皆さん、日ごろ健康診断を受けていますか。職場で健診を受けている方、ご自分で有料のドックを受ける方、市町村で行う住民検診を受ける方、通常の診療に伴う検査だけ受ける方、全く何もしない方、いろいろですね。そして一口に健康診断といっても、血液検査が含まれないものから、脳ドッグなど高度な項目を含むものまであり、費用も様々です。
住民健診では、普段通院していてもやらない検査、例えば眼底検査や便を使った大腸がんの検査などが含まれており、本人が気づいていない病気が見つかることがあります。また、普段の状態を把握しておくと、具合が悪くなった時に比較することができます。たとえば、発熱時に肝機能に異常があったとしても、それがそのときの変化なのか以前からあったものかがわからないと判断に迷います。杉並区で行っている区民検診で十分とはいえませんが、ホームドクターとしてはせめてこのくらいの検査を一年に一回は受けていただきたいと思います。
さて今まで、自由業の方、仕事を持たない方など、職場健診を受けられない方々を対象に、市町村が基本住民健診を行ってきました。この健診制度が4月から大きく変わります。
国が40歳〜74歳の全ての人を対象に、特定健診という新しい健診制度を発足します。特定健診は、将来の医療費削減を図るため、生活習慣病の発見と予防を目的としていますので、国の定める項目には、今まで杉並区の健診に含まれていた貧血、腎機能、尿酸、心電図、眼底写真などの検査は基本的には含まれません。そして、誰が健診を行い、誰が対象になるかというと、「保険者が被保険者、被扶養者全てに健診を行うことが義務づけられる」のですが、これでは何のことやらわかりませんよね。
この特定健診の説明をするためにそよかぜ通信を書き始めたのですがちっとも完成しないので、詳しい説明は後日にします(この「後日」があてにならないことは自覚しています)。今回お伝えしたいことは、特定健診の準備が整っていないので、杉並区国保の方でも少なくとも6〜7月頃までは2008年度の健診は出来そうにないこと。そして、今まで区民検診を「主婦健診」として受けてこられたような、社会保険の被扶養者の方に関しては、杉並区医師会としては全く見通しが立っていない、ということです。現在、杉並区と杉並医師会では頻回議論・検討を重ねています。検査項目も、国の基準よりはかなり現行の健診に近いものになりそうです。また、75歳以上の方の健診はおそらく今までどおり誕生月にすることになると思いますが、「努力義務」となり国としては積極的に健診を行う方針でないのは残念です。どんな方が当院で健診を受けることができるのか、わかり次第お知らせします。
定期的に通院されている方の日ごろの検査は、健診の時期をふまえて行っています。しかし、今後の健診に関しては私達にもまだまだ不明な点が多くはっきりご案内できません。健診とは別に、必要に応じて検査を実施していきますのでよろしくお願いいたします。
百日咳は痙攣発作性の咳が長く続き、大人でも大変苦しいものですが、6ヶ月未満のお子さんがかかると命に関わることもある病気です。本来3ヶ月を過ぎたらなるべく早く接種することになっており、予防接種の予診票を生まれたらすぐに配る、あるいは生まれる前に配る自治体もありますが、杉並区の現状では予診票は4ヶ月健診で配られ、さらにそこでBCGを接種してしまうので、多くのお子さんは5ヶ月にならないと三種混合ワクチンが受けられない仕組みになっています。ただし保健センターに申し込めば、4ヶ月健診の前でも予診票をもらうことが出来ます。3ヶ月になったらなるべく早く三種混合ワクチンを接種しましょう。
赤ちゃんがお母さんからもらった麻疹の免疫は徐々に減っていき、一歳ごろには完全に免疫がなくなります。早い赤ちゃんでは生後数ヶ月ではしかにかかります。麻疹は予防接種で防げる病気ですから早く予防接種をすればよさそうですが、お母さんの免疫が残っているときに行っても免疫が出来にくいので、皆の免疫がなくなる一歳になってから接種をすることになっています。それまでに多くの子供の免疫がなくなっているにもかかわらず、滅多に麻疹にかかる子がいないのは、皆が予防接種を受けて流行が起らないようにしているからです。予防接種は自分を守るだけでなく、免疫を持たない他の子供も守ります。一歳になったらすぐにMRワクチンを受けましょう。
さて、ここで大事なこと。前記の三種混合とMRワクチンはポリオより優先して受けてください。ポリオは外国から持ち込まれる可能性もあるので必要なワクチンではありますが、ここ何十年も日本国内では発症していません。集団接種のため接種時期が限られるので、ついポリオワクチンを優先し、三混、MRは後回しになりがちです。しかし、ポリオの接種は春・秋ともに一ヶ月以上に渡り何回にも分けて行われます。きちんとスケジュールを組めば、三混もMRも適切な時期に接種でき、さらにポリオも受けることが出来ます。そして、たとえポリオが受けられず半年遅れても構いません。是非、三種混合とMRワクチンを優先させて受けてください。
昨年、若者の間で麻疹の流行があったことはご記憶に新しいと思います。一回の予防接種ではまれに免疫ができないこともあり、さらに周囲に流行がないと一度出来た免疫も10数年で落ちてしまうことから、多くの国では二回接種が行われています。アジアで二回接種を行っていないのは、北朝鮮と日本だけでした。アメリカから遅れること20年、ようやく昨年、日本でも二回法になり、一歳と小学校入学前の二回接種になりました。二回目の接種期間は、入学する年の3月31日までです。今年も既に多くの麻疹の発症が報告されています。忘れずに受けてください。
これからの子供は二回接種を受けられますが、現時点で法定接種による二回目のMRワクチンの接種を受けているのは、現在小学校1年生の子供と今年1年になる子供だけです。その上子供達にも免疫を付けるため、今後5年間に限り、中学1年と高校3年でMRワクチンを接種することになりました。今の6年生と高校2年生が今年度受けますね。そして毎年順番に接種して、5年後に今の小学校2年生と中学1年生が受けて終了というわけです。
ただ、高学年になると、塾に行ったり部活があったりでなかなか接種率が上がりません。
現在11歳から13歳になるまでに接種することになっているDT(ジフテリア・破傷風)二種混合ワクチンの接種率の低さを見ると、MRも果たしてどのくらいの方が受けてくれるのか心配です。
DT接種の予診票は11歳になると送られてきます。生ワクチンと違って、DPTやDTのような不活化ワクチンは繰り返し接種しないと免疫が維持できないのですが、小さい頃と違って、保護者の方の関心も薄れ、接種率は低いものとなっています。予防接種のお陰でジフテリアは現在ほとんど見られなくなりましたが、破傷風は世界中どこの土壌にもいる菌です。ひとたび発症すれば、半数近くの方が命を落とします。接種後10年くらいで免疫が落ちてくるので、20歳前後で追加接種を勧める医師もいます。ちなみに私は、3〜4年前に追加接種をしました。
風しんは重症になることはそれほど多くはありませんが、妊娠初期にかかると先天性風しん症候群と言って、高率に赤ちゃんに奇形が発生することはご存知でしょう。例え接種をしていても抗体価が低い場合には、感染して先天性風しん症候群になる例もあることが知られています。必ず二回予防接種を受け、そして女性は結婚したら妊娠する前に抗体価を調べてもらいましょう。
そして麻疹は合併症を起こしやすく、命に関わることもある重い病気です。妊娠中にかかると初期では多くの場合に突然流産になり、また後期でも激しい出産になることが多いそうです。またお母さんの持っている免疫が弱いと、生まれてくる赤ちゃんの免疫も弱くなるので、生後6ヶ月未満でも麻疹にかかってしまうことがあります。風しん同様、妊娠前に是非しっかり免疫をつけておきたいものです。
日本は予防接種後進国です。全世界100カ国以上で行われているHibと呼ばれる髄膜炎を予防するワクチン(これもアジアで行っていないのは北朝鮮と日本だけです)や、肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチンなどが日本では行われていません。日本で定期接種として公費で受けられるものは最低限受ける必要があると思って、必ず受けるようにしてください。
日本脳炎の予防接種は、現在、積極的な推奨が控えられています。何故中止されたか、何時再開されるか。この話も書き出したらあまりに長くなってしまったため原稿からカットされ、特定健診同様、何時の日にか日の目を見ることを待っている文章の仲間入りとなりました。短い文章に差し替えです。
予防接種の事実上の中止は、予防接種後に発症した重症の急性散在性脳脊髄炎(ADEM)が、予防接種の健康被害として認定されたことによります(「認定されたこと」は必ずしも「因果関係が明らかになった」ことを意味しません。)50年以上の日本脳炎の予防接種の歴史の中で、初めての重症例ですが、「健康な人を守るために行う予防接種では、重篤な副反応をおこしてはならない。」という考えと、半年後には新しいワクチンが出来るという予想の下に、平成17年5月に事実上接種を中止しました。しかし、新しいワクチンにも問題が見つかり、少なくとも今後一年は供給される見込みがなく、また生産ラインのなくなった従来のワクチンを再度作ることも不可能です。現在、日本脳炎のワクチンはほとんど入荷しません。
しかし、以前より危険性は低いとはいえ、日本では地域により日本脳炎の感染の危険性があります。日本脳炎は人から人へは感染しませんので大流行はしません。豚でウィルスが増殖し、豚の血をすったコガタアカイエカが人を刺すことで感染します。コガタアカイエカは暖かい地方に生息するため、日本脳炎の発症は西日本が中心です。九州や四国・中国地方の豚はほとんどが日本脳炎のウィルスを持っており、これらの地域、特に養豚所の近くでは感染する可能性があります。感染しても必ずしも発病しませんが、ひとたび発病すると半数以上に意識障害を生じ、約半数が死亡あるいは後遺症を残します。宮崎県の自然感染を調べた調査では県民の5〜10%がウィルスを持った蚊に刺されているそうです。また、アジア全体に広く分布しており、アジア全体では年間3〜4万人の患者が報告されています。報告によっては北海道を除く日本全体で豚に感染が見られ、コガタアカイエカも生息していると伝えています。事実、昨年、茨城県で日本脳炎の発症が確認されています。今後免疫の無い子供が増えていくと、患者の増加が心配です。
厚生労働省は積極的な接種は推奨しないものの、感染の機会のある人は副反応の可能性を知った上で希望すれば公費で接種可能としています。感染の可能性は個人(地域)によって大きく異なります。副反応が生じる可能性と比較して接種が必要かどうか判断することになります。また、今後接種が再開された時には、たとえ定期接種の時期(T期は7歳半、U期は13歳になるまで)を過ぎてしまっていても当然公費で接種できると考えるのが普通ですが、厚生労働省は、希望すれば接種できたのだから、年齢が過ぎていれば定期接種(=公費負担)とはしないとの見解を出しています。充分な供給がないのであまり積極的にお勧めは出来ないのですが、当院には少し在庫があります。夏に九州や四国の養豚所の近くに里帰りする方、中国や東南アジアに転勤の可能性がある方など、ご希望の方はお問い合わせ下さい。
予防接種は万が一の副反応に備え、なるべく平日の昼間に受けることをお勧めしますが、保護者の方の都合でどうしても平日に接種できない方のために、今年も3月の第一週に子供予防接種週間を設けます。当院では3月2日(日)午前9時から午後5時と4日(火)午後8時まで予防接種を行います。完全予約制です。なお、2日は杉並区の休日診療輪番担当を併せて行いますので、感染症の方と接触する可能性があること、病気の方の診療を優先することがありうることをご了承の上ご予約下さい。詳しくは受付にお問い合わせ下さい。
東京のスギ花粉の飛散開始日(スギ花粉の飛散が一定以上になる日)は2月5〜7日頃、飛散量は昨年の2〜3倍、過去5年の中で2番目と予想されています。年末から少量飛び始め、既に多くの方に花粉症の症状が出ています。抗アレルギー剤は花粉症が本格的になってから飲み始めたのでは、症状は半分くらいしか抑えられません。鼻の粘膜がぐずぐずになってからでは点鼻薬も効きにくくなります。花粉症のある方は早めに治療を開始しましょう。
診療所の裏手にあった駐車場が年末に閉鎖され、当院の駐車場は一台分減ってしまいました。現在は敷地内の2台の他に、旧診療所の駐車場の向かいに一台分ありますが、ちょっと離れているのと一方通行の関係もあり、あまり利用されていません。医院周辺に路上駐車されますと、短時間でもレッカー移動されることがあります。駐車場がふさがっている場合は、診療所から妙正寺公園寄り、科学館入り口の信号手前にあるコインパーキングをご利用下さい。診察受付時にその旨伝えていただき、駐車料金を精算後、直ちに領収書をお持ちいただければ料金を窓口でお支払いいたします。後日の精算はお受けできませんのでご了承下さい。
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