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成瀬医院

 


そよかぜ通信
 

Vol.7 No.1 Ver.2
200
548

 

発行:成瀬医院  成瀬 清子

東京都杉並区清水 2-11-12

tel 03-5311-5133

 

 

目 次

 

お久し振りです

血圧の管理——家で血圧を測ってみましょう

雑談:実は内科医なのですが

薬の確認をお願いします

子どものスキンケア

 


 

お久し振りです

そよかぜ通信を発行できないまま、半年が経ってしまいました。少しずつ書いていた文章の多くは季節外れになってお蔵入り。相変わらず自己嫌悪の日々です。今シーズンのインフルエンザの流行は遅いスタートでしたが思いのほか広がり、一時は検査キットも品切れとなりました。暖かくなり急速に患者さんは減っておりますが、例年でも4月中はインフルエンザの患者さんがみられます。(厳密に言えば一年中患者さんはいますが。)ちなみに、今までに当院で検査してインフルエンザと診断した方で一番遅い方は5月の連休が明けてからでした。今年はまだまだ充分注意して下さい。

 

血圧の管理——家で血圧を測ってみましょう

 血圧が高いと身体に様々な悪影響を及ぼすことは皆さん御存知の事でしょう。では「どのくらいの血圧」が一番いいのでしょう。年々、世界的に血圧管理は厳格になってきています。以前は、年をとると血圧が上がるのは当たり前と考えられていて、「年令から何十を引いて、、、」という計算をしたこともありました。しかし、高齢の方でも、血圧が高い場合は降圧剤で下げた方が、明らかに心筋梗塞、脳卒中などの発症が少ないことが分ってきて、最近は、どの年令の人でも低い方がいいと考えられています。具体的にはどのくらいがいいのでしょう。

 わが国の2004年のガイドラインでは、正常血圧は130/85未満、至適血圧は120/80未満で、140/90以上では年令を問わず降圧剤を開始し、降圧目標は若年、中年は130/85未満、高齢者でも140/90未満となっています。140/90では高過ぎるというわけです。糖尿病や心、脳血管障害、腎機能障害などの合併症があれば、さらに厳格な管理が求められています。喫煙や肥満、高脂血症なども危険因子です。皆さんが考えられている血圧よりも低いのではありませんか。

 血圧を管理する際、血圧の値とともにもう一つ考えなくてはならないことがあります。それは、何時、どのような状況で測られた血圧かということです。血圧は刻々と変化しています。緊張してドキドキしているときは、まず高くなっていますし、温度でも変化します。入浴後、お酒を飲んだ後、運動の後は低くなります。診察室では普段より高めになる方が多く、「白衣高血圧」と言う言葉があるように、医師や看護師が測ると極端に高くなる方もおられます。高血圧が身体に与える悪影響は、一日の中で、あるいは一年の中で血圧の高い時間がどれだけあったかに強く関係します。一ヶ月に一度医療機関で測った血圧だけではそのリスクはなかなか判定できません。血圧の値と合併症の関係を見た場合、医療機関で測った血圧より家庭で測った血圧の方がよく相関すると言われています。医師が測った血圧がいつも高くても、家ではいつも低ければ治療は必要ないわけです。もっとも、毎日職場でストレスにさらされ、診察室と同様に職場でも高い場合には、例え家では低くても治療が必要になります。

 「家で測ると病院と違うから」「測る度に違う値が出るから」と家庭用の血圧計を信用しない方がおられますが、多く場合、血圧計は正常です。血圧とは変動するものなのです。心配でしたら一度血圧計をお持ち頂き、医院で測った血圧と比べてみましょう。(たまにおかしな血圧計があるのも事実です。)

 次に大事なのは、測る時間です。血圧は一日の中で大きく変化するのが普通です。これを日内変動といいます。活動している昼間は高く、夜中は100以下になっていることもあります。血圧が低いからといって、脳梗塞になるわけではありません。むしろ、夜中に下がらないタイプは合併症を起こしやすいとされています。そして、目が覚める少し前から血圧は上がり始めますが、この朝の血圧がくせものです。心筋梗塞や脳卒中が明け方から午前中に多いことはよく知られていますが、最近は「白衣高血圧」とは逆の「隠れ高血圧」というものが注目されています。朝方だけ血圧が高く、医師が測る時には正常になっている高血圧です。日内変動で朝方だけ高い場合、たとえば人間ドッグを受けても見のがされてしまい、自分の血圧は正常と思い込んでしまいます。また、毎朝飲んでいる降圧剤の効果が翌朝まで続かず、朝方高くなっている場合もあります。薬を飲んでから受診すると、測る時には正常になっていてうまくコントロールされていると判断されてしまいます。隠れ高血圧は持続型の高血圧よりさらに危険度が高いことがわかってきました。寝る前に降圧剤を内服したり、作用時間の長い薬に変更したりするなどして早朝の高血圧をおさえる事が重要です。

しかし、この隠れ高血圧は御自分で測定していただかないことにはなかなか見つけられません。家での朝の血圧が130/85mmHg以上では高すぎます。是非、御家庭で血圧を測ってみて下さい。これから血圧計を買われる場合は、手首や指で測るものより、上腕で測るタイプをお勧めします。ただし、心配性で自分で測定した血圧に一喜一憂してしまう方は、むしろ医者まかせの方がよいかもしれません。お一人お一人御相談しながら、上手に血圧を管理していきましょう。

 

雑談:実は内科医なのですが

 先日、糖尿病の検査をして欲しいという方から電話があったそうです。二回目の電話で、近所の人に「あの先生は小児科だから、糖尿病を見てもらうには向いていない。」と言われたとのことで、結局、来院されませんでした。私は内科医で、一応糖尿病専門医の資格も持っているのだけどなあ、確かに子どもの患者さんが増えてきて、本来荷物入れのかごもぬいぐるみでうまっているから小児科医と間違われても仕方ないのかなあと複雑な心境でした。最近、そよかぜ通信で取り上げるテーマが子どもの病気などに片寄っており、大人の方にも役立つ事も書かなくてはと思っていた矢先のことです。今回は、やはりしばらくお蔵入りしていた、血圧に関する内容にしてみました。

 

薬の確認をお願いします

 当院は「院内処方」といって、薬局に行っていただかずにこちらで薬をお渡しする方式にしています。厚生労働省は医薬分業と言って、処方箋を発行して調剤薬局で受け取っていただく「院外処方」を推奨しています。これは、かかりつけ薬局を決め、複数の医療機関の薬をチェックした方が安全で、間違いが起こりにくいからです。決して「薬は出せば出す程医者が儲かる」のを防ぐためではありません。当初はそのような目的もあったのですが、それは昔の話。薬の値引きはほとんどないのに、買う時は消費税が加算されるし、期限切れで捨てる薬、薬袋、人件費等を加味すると、実は院外処方にさせていただいた方が経営的にはずっと楽なのです。中には、保険請求できる値段より買う値段の方が高くて、処方すればする程損をする薬さえあります。もし皆さんが院外処方を希望されれば、喜んで院外処方に切り替えますが、近くに薬局がない当院で院外処方にすると、患者さんには手間も費用も負担が増えてしまいます。

 あれあれ、話が横道にそれてしまいました。この文章の目的は愚痴を言うことではありません。そんな訳で、当院では今後も院内処方を続けるつもりですが、院内処方にすると、気を付けてはいてもどうしても間違いがおこります。薬種類の間違い、数の間違い、どちらも起こっているのが現状です。内容の間違いは当然危険が伴います。数の間違いは後になるとお互いに確認がしにくいものです。どうぞ皆様、薬を受け取ったらその場で内容を確認して下さい。よろしく御協力お願い致します。

 

子どものスキンケア

ファミリーサポートという子育て支援組織の会誌に寄稿した文章です。これも少々季節はずれなのですが、せっかく書いたので載せることにします。

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いよいよ花粉症のシーズンとなり、春を迎えるのが憂うつな方も多いことでしょう。最近、アトピー性皮膚炎の子どもが増えていますが、スギ花粉の時期にはアトピー性皮膚炎が悪化する子どもも多く見られます。また、皮膚の弱い赤ちゃんなどでは、アトピーや花粉とは関係なくても、すぐほっぺや口の回りが荒れてしまいます。あまり湿疹がひどい場合は、医療機関を受診してお薬をもらうことも必要になりますが、まずは日ごろ注意事項を確認しておきましょう。普通の湿疹でもアトピー性皮膚炎でも、悪化させる主な原因は1.汚れていること、2.ぬれていること、3、こすることです。

 

デリケートな肌に汗を放っておくことは禁物です。毎日お風呂やシャワーで皮膚を清潔に保ちます。赤ちゃんの顔の湿疹も毎日きちんと石鹸で洗うことでよくなることもあります。顔についた食べ物やよだれ、鼻汁をつけたままにしておくと、すぐ肌が荒れてしまいます。こまめに拭いてあげることが大切ですが、乾いたタオルでごしごしこすってはいけません。こする刺激で悪くします。たっぷり水を含んだタオルで、やさしくたたくように汚れをとります。そして、そのままぬらしておかずに、乾いたタオルで押すようにしっかり水分をとりましょう。ぬれた肌をそのままにしておくと、肌荒れはひどくなります。昔は、洗った手をきちんと拭かないとすぐあかぎれになりました。最近、しもやけやあかぎれを見ることは少なくなりなりましたが、きちんと拭くことの大切さは変わりません。冬の乾燥で唇が切れてしまった時も、湿らせる為についつい唇をなめてしまいますが、これもかえってひどくします。こまめにリップクリームなどをつけてください。

アトピー性皮膚炎がある場合は、お風呂でごしごしこするのも禁物です。石鹸を泡立て、手のひらでなでるように洗い、十分にすすぎます。元来子どもの肌は乾燥肌で、アトピー性皮膚炎ではさらに乾燥肌が特徴的です。軽い場合には保湿をするだけでよくなります。お風呂のあとや手を洗ったあとは保湿剤を塗りましょう。ひどい場合は薬が必要な場合もあります。薬を塗る時も、一生懸命すり込んでも決して皮膚に吸収はされません。こすることは無駄な刺激になりますし、肌の表面の薬の量はむしろ少なくなってしまいます。さっとひとなでするのが一番です。

 

湿疹はなかなか簡単に治ってくれませんが、毎日の肌の扱い方、少しは感じがつかめたでしょうか。汚さない、ぬらさない、こすらないを心がけていただくと、きっと今より軽くなると思います。大人の方も同様に、肌をいたわってください。

 

 


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