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成瀬医院

 


そよかぜ通信
 

Vol.2  No.5 (ver.1)
2000年6月12日

 

発行:成瀬医院  成瀬 清子

東京都杉並区清水 2-11-12

tel 03-5311-5133

 

 

目 次

 

りんご病

「この薬に副作用はないですか」ー副作用の考え方ー

 


 

りんご病

 先月は、とうとうそよかぜ通信を発行しないままに過ぎました。4月、5月は、相変わらず感冒性胃腸炎が見られましたが、今、目立つのは、「伝染性紅斑」です。まず頬がリンゴのように赤くなることから「りんご病」と呼ばれています。その後、四肢に大理石様というかレース様というか、まだらの発疹がでます。ウィルスによる感染症で、全身症状は軽く、熱もせいぜい37.5度位です。多少痒みを伴うこともあります。主に4−12歳位の小児に見られ、発疹の出るころにはウィルスの排泄は止まっているので、登園、登校禁止にはなりません。しかし、発疹の出ている間(通常4−7日)は、妊娠初期の方との接触は避けたほうが無難です。また、一度おさまった発疹が、日光に当たったり冷えたりすると、また出てくることがあります。無理はせず、熱があったりだるいときは学校もお休みしましょう。

 

「この薬に副作用はないですか」ー副作用の考え方ー

 この質問は外来で最もよく聞かれるもののひとつですが、残念ながら副作用がないといえる薬はありません。「副作用」には大きくわけて3種類あります。血圧の薬で脈がゆっくりになったり、くしゃみ、鼻水の薬で口が乾いたりといった、薬の本来持っている作用が患者さんにとって不都合な形で強く出てしまうもの。発疹が出たり、肝障害をおこしたり、本来の作用とは明らかに違った害が出るもの。薬と直接関係がなくても、飲んでる間に出た症状で、統計上副作用にはいるものです。そして、これらの副作用は(副反応)は、必ず出るものではなく、かなりの頻度でおこるものから、極まれにしかでないものまで、薬により様々です。さらに、給食にほんの僅かはいっていた蕎麦粉でショックをおこした例に見るように、普段全く無害だと思っている食品ですら、人(体質)によっては命にかかわるる場合もあるのですから、すべての人に安全だと保証できる薬はあり得ないのです。

 では、副作用が出るかもしれない薬を何故使うのでしょう。薬の副作用を考えるとき、どのくらいの頻度で起こるかが問題になる訳ですが、薬を使うか使わないかは、副作用があるかないかで決めるものではありません。その前に、治療しなかったらどうなる可能性が高いか、そして、薬を使ったらそれがどう変わるのかという根本の問題があります。白血病に使う抗がん剤などはまず100パーセント強い副作用がでます。それでも治る可能性があり、治療しなければ死につながるので使うわけです。一方、副作用のごく少ない薬でも、単に気休めで飲むのなら止めたほうがいいのです。要するに病気の種類、薬の利点、欠点をてんびんにかけ、その人にとってどっちが得になりそうかを考えて決めるのです。しかも、それは可能性と確率の問題です。

 外出して交通事故に遭わないという保証はどこにもないけれど、それを理由に家から一歩も出ない人はまずいませんが、これが飛行機となると、事故なんて全く気にしない人から、絶対に乗らない人までいます。日常の行動も、メリット、デメリットを知らず知らずにてんびんにかけ、その人なりの判断基準で決めているのです。薬を使うか、使わないかを含めた医療における様々な選択。私はこれは最終的には、どう生きたいか、といういわゆる人生観の問題だと思っています。

 すべての情報をお伝えするの事は残念ながら不可能ですし、患者さんに決めて下さい言うのも難しいことです。日常的な薬の選択は、私は基本的には「患者さんの人生観の問題だ」としたそのうえで、多分に自分の人生観に左右されつつ、医者としての専門的な立場から(ただし「私の持つ知識の限り」の注釈付きで)候補を決め、薬の使用を強く勧めたい場合、まあどっちでもいいかなの場合、それぞれの口調、ニュアンスをもってお話しているのが現状です。

 先日、ロキソニンという薬の肝障害が新聞などでもとり上げられましたので、少し触れます。ロキソニンは、主に整形外科で使われている消炎、鎮痛、解熱剤で、効果がしっかりしている割には胃腸障害などが少なく、私も気管支炎などによく用いています。この薬は日本では1日に80万人以上に投与されていますが、重篤な肝障害の報告は数年間に10人以下と極めてまれです。副作用がないとは言いませんが、やはり私は今後も使う予定です。気になる方はお知らせ下さい。

 もう少し書きたいこともあるのですが、紙面の都合で終わりにします。個々の薬の副作用につき、具体的に知りたい場合は遠慮なしに聞いて下さい。私の判る範囲で、または調べてお伝えします。

 


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